歯を失ってしまう理由と
インプラント・入れ歯治療
何らかの理由で歯を失ってしまうとさまざまな問題を抱えることになります。ここでは歯を失ってしまう理由や、歯がないことのデメリット、そして失った歯を補う治療法について詳しくご紹介します。
目次
歯を失う理由
若い方の場合、考える機会は少ないかもしれませんが、人はさまざまな理由で歯を失う可能性があります。ここでは歯を失う主な理由をご紹介します。
歯周病
歯周病は歯石などが原因で起こる歯やその周辺の病気です。食べ物の残りや、喫煙などによる汚れが歯に付着したままの状態になると、歯ぐきが腫れ、歯周病が悪化していきます。初期の歯周病でただちに歯を失うわけではありません。しかし歯科医などによる適切な治療などを受けなければ、歯を支える骨が溶けていき、最終的には歯を失う可能性があります。
完全に歯が抜けなくても、ぐらついた状態のまま生活していると破損するリスクも高くなるため、注意が必要です。
虫歯
虫歯菌から発生した酸によって、歯が溶かされるのが虫歯です。初期の段階で適切な治療を受ければ歯を失うことはありません。しかし、放置してしまうと虫歯菌は歯の内部まで浸透します。最終的には虫歯菌によって歯の神経が全て死んだ状態になり、抜歯するしかなくなります。
神経の治療を行った歯であっても、何らかの理由で歯の根に埋められた薬剤が腐った場合、抜歯になる可能性があります。
事故など
交通事故などによって受けた衝撃で歯がぐらついたり、折れてしまったりするケースもあります。ダメージが大きい場合は抜歯の対象となります。基本的に永久歯が折れたり、ぐらついてしまったりした場合は修復が困難なため、歯を失う可能性が高いです。
歯がないことのデメリット
歯にはさまざまな役割があるため、失うことによって多くのデメリットが生じます。しかし、歯を失う前や、失った直後は具体的にどんなデメリットがあるのか想像がつかないでしょう。ここではいくつかのポイントに分け、具体的に歯がないことのデメリットをご紹介します。
機能面のデメリット
歯を失うと両隣の歯も傾いてしまうことがあります。長期間にわたって歯が抜けたまま放置すると、周囲の歯の傾きが大きくなります。さらに、向かい合う反対側の歯も咬み合う歯がないことから、徐々に伸びてしまう点もデメリットです。
このように、歯を失ったまま放置すると他の歯にも影響を与え、全体の咬み合わせが狂い始めます。結果として菌の集合体「プラーク」がたまりやすくなり、虫歯や歯周病が発生しやすい口腔内環境となります。前述の通り、虫歯や歯周病は歯を失う原因となるため、1本の歯を失い、放置したことによって他の歯まで失う原因になります。
見た目(審美面)のデメリット
外から見える前歯などを失った場合、見た目にも分かりやすいので人前で口を開けることに抵抗を感じるようになります。そのため、コミュニケーションが阻害されたり、うまく笑顔を作れなくなったりするケースもあります。
さらに、歯が抜けたまま放置すると歯ぐきが小さくなるため、顔の輪郭も変化します。具体的には頬がこける、顎がたるむことがあります。
生活面のデメリット
食事の際にうまく食べ物を咬み切れない、あるいは咬み砕けない状態になります。そのため、食べられるものが制限される、消化が悪くなるといった点もデメリットです。歯を失ったことで咀嚼がうまくできないと、唾液の分泌が不足して口臭の原因にもなります。
さらに、歯のない部分から空気が漏れるので、発音が不明瞭になる点もデメリット。結果としてコミュニケーションが阻害されるケースがあります。
入れ歯とインプラントの比較
歯を失った際の治療には入れ歯とインプラントがあります。いずれも人工の歯を入れる形になるため、違いが分からない方も多いでしょう。ここでは入れ歯とインプラントの違いをいくつかのポイントに分けてご紹介します。
※表は左右にスクロールして確認することができます。
インプラント治療 | 入れ歯治療 | |
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特徴 | 外科手術によって人工の歯根(インプラント)を顎の骨に埋め込んで土台を作り、人工歯を装着します。 | 脱着可能な人工の歯。外科手術不要で装着できます。 |
メリット |
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デメリット |
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入れ歯治療について
部分入れ歯とは
入れ歯にもいくつかの種類がありますが、一部の歯のみを失った場合に使われるのが部分入れ歯です。バネによって歯が固定されるため、多少の遊びがあります。
古くから行われている治療法で、自分の口の中に合ったものを適切に使用することで、本物の自分の歯のように使えます。
入れ歯治療のメリット・デメリット
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治療費
入れ歯治療は古くから行われている治療なので、選択肢が豊富で保険診療対象のものを選べばコストを抑えられます。保険診療のものを選べば、1万円以下での治療も可能。保険適用外のものになると30万円ほどかかるケースもありますが、費用を抑えやすいといえます。
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装着感
入れ歯は人によっては異物感があります。慣れるまで実際の歯の違いから違和感を覚える可能性があります。また、脱着可能な点はメリットでもありますが、使用中に外れてしまうこともあります。
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咬む力
高性能な入れ歯であれば、しっかりと咬めるようになっています。
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見た目
入れ歯はどうしても固定するバネなどが見えるため、インプラントよりも見た目が劣ります。
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骨の吸収
顎の骨に埋め込むインプラントよりも咬む力が伝わりにくく、顎の骨が痩せやすいです。
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他の歯への影響
部分入れ歯の場合、バネによって他の歯に力がかかるため、影響を受けやすい傾向にあります。特に強く固定すると入れ歯は動きにくくなる一方で、他の歯への影響は大きくなります。
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手術の必要性
入れ歯は手術の必要がないため、治療の際の体への負担も小さくなります。
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交換時期・寿命
入れ歯の交換時期や寿命は種類やメインテナンスによって異なりますが、自費治療となるタイプの場合5〜10年ほどは問題なく使用可能です。
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治療期間
入れ歯は手術が必要ないので、平均して1ヶ月程度で治療が完了します。
インプラント治療について
インプラントとは
インプラントとは、人工の歯根です。インプラント治療では外科手術によってインプラントを顎の骨に埋め込んで土台を作り、人工歯を装着します。
インプラント治療のメリット・デメリット
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治療費
保険診療外で外科手術が必要になるため、治療費が高額になります。一般的には1本あたり30〜40万円の費用がかかります。
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装着感
インプラントは入れ歯よりも本物の歯に近く、違和感が少ないです。顎の骨にしっかり固定されるため、違和感はあまりありません。
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咬む力
インプラントは顎の骨にしっかりと固定されるため、入れ歯よりも力をこめて咬むことができます。実際の歯に近い感覚で、硬いものもしっかり咬みしめられます。
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見た目
インプラントの色や質感は実際の歯に近く、見た目に優れています。
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骨の吸収
歯を失うことで骨の吸収が起こります。以前はインプラントを行うことで骨の吸収を抑えられると考えられていましたが、歯を失った時点で吸収は避けられないことがわかっています。そのため、インプラントの際には骨造成などが同時に行われることがあります。
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他の歯への影響
インプラントは顎の骨に直接固定するため、他の歯への影響はほとんどありません。
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手術の必要性
インプラントは外科手術が必要となるため、高血圧などで手術が難しい方は受けられません。
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交換時期・寿命
インプラントは歯周病などにならないかぎり交換の必要はありません。ただし、クラウンの部分は摩耗するため、交換が必要となる可能性があります。
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治療期間
インプラントの場合、手術を行ってから骨との結合を待つ必要があるため下顎で3ヶ月、上顎の場合は4ヶ月ほどかかります。
Pick Up!-入れ歯もインプラントもしないと…-
一部の歯を失ったとしても、すぐに生活に大きな支障が出るわけではありません。他の歯が残っていれば食事などでもそれほど困ることはないでしょう。しかし、1本の歯を失うことによって、全体のバランスが崩れたり、虫歯や歯周病になりやすくなったりするリスクが高まります。結果として全ての歯を失う可能性もあるのです。
虫歯や歯周病、事故などで歯を失った場合は、なるべく早い段階で入れ歯やインプラントなどの治療を検討しましょう。