妊娠中の治療が大事です

妊娠中はただでさえ不安なことや準備することも多く、ご自身の歯のことはついつい後回しにしてしまいがちです。また、妊娠中にレントゲンを撮ったり、麻酔をしたりすることに対して、不安を感じるお母さんもいるかもしれません。しかし、妊娠中に歯の治療をしておかなければ、お母さんだけでなく赤ちゃんも危険な状態になってしまうことがあります。

福岡市では、市内在住の妊婦さんを対象に「妊婦歯科検診」を無料で行っています。ぜひ検診を受けて、治療すべきところがないか点検してもらいましょう。以下に妊娠周期ごとにできる対応をご紹介しますので、参考にしてください。

妊娠初期（1～4ヶ月）

妊娠初期は体調が不安的な時期でもあり、つわりにより口を開けることさえ難しい場合もあります。緊急を要する場合以外は治療を控えた方が無難です。

妊娠中期（5～7ヶ月）

妊娠中期はいわゆる安定期といわれており、体調も落ち着いていることが多く、受けられる治療の幅が広がります。症状が特になかったとしても、この時期にマタニティ検診を受けたり治療を受けたりしておいた方が良いでしょう。

妊娠後期（8ヶ月以降）

妊娠後期はお母さんのお腹が大きくなり、治療椅子に仰向けの体勢で長時間座ることが難しくなります。応急処置以外は、出産後に改めてスケジュールを組んで治療する必要があるでしょう。

ホルモンバランスと歯周病の関係

もともと歯周病は男性より女性の方がかかりやすく、女性ホルモンと大きく関係しているといわれています。女性ホルモンのバランスが変化すると、歯肉炎を起こしやすくなり、歯周病の原因をつくってしまいます。

歯肉炎とは、歯と歯ぐきの間の歯垢や歯石がたまり、細菌が入り込んで歯ぐきが炎症することをいいます。炎症が悪化すると、歯を支える骨が溶けてしまい最終的には歯が抜けてしまいます。これが歯周病です。

女性は男性より唾液の分泌が少なく口の中が乾きやすい傾向にあります。口の中が乾燥していると、さまざまな症状を引き起こす原因となり、歯周病にも繋がるのです。

さらに妊娠中の女性は、より歯周病のリスクにさらされています。妊娠中は女性ホルモンが多く分泌され、歯肉炎を起こしやすくなるからです。また、妊娠初期のつわりにより歯みがき自体がつらくなってしまい、口腔内環境を清潔に保つのが難しくなるのも歯周病リスクが高まる要因のひとつ。このように、妊娠中は歯周病のリスクが重なりやすくなるため、特に注意が必要です。

歯周病が早産へ繋がることも

歯周病を放っておくと、早産や低体重出産のリスクが高まることが分かっています。歯周病にかかった妊婦さんのお腹にいる赤ちゃんが早産になったり、低体重になったりするリスクは、通常よりも5～7倍高くなるといわれています。また、妊婦さんが飲酒や喫煙をしたり、高齢出産であったりする場合よりも、歯周病による早産や低体重出産のリスクの方が高いともいわれています。

歯周病菌が増えると、血中に「サイトカイン」が増加し「プロスタグランジン」が分泌されます。この「プロスタグランジン」が分泌されると、子宮を収縮させ陣痛を引き起こしてしまい、早産に繋がることがあります。このように、妊娠中に歯周病を発症すると、お母さんの健康だけでなく、お腹の赤ちゃんへの影響も考えられます。歯周病であることが分かったら、なるべく早く治療に取り組むことをおすすめします。